嗜好性薬物の世界

書評

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内藤 裕史 (ないとう ひろし) 『薬物乱用・中毒百科―覚醒剤から咳止めまで』 丸善 (2011年)

学術書であるが、医学・薬学に造詣がない読者にとってもそこそこ理解できる。分量は多く、様々な事例が網羅されている。日本語での嗜好性薬物に関する文献では、管理人が知る限り随一の物である。著者は中毒学の権威で、これまでに『中毒百科』という大著を上梓している。

各章の末尾には長大な参考文献(主に英語論文)のリストがあり、著者が数多くの資料を参考にして執筆したことが伺える。

デザイナーズドラッグと呼ばれる、規制逃れのための構造を変えた物質(脱法ドラッグ)についても取り上げている。また、大麻のもたらす精神的な後遺症についてもしっかりと書かれており、大麻無害論を主張する人々にもぜひ一読していただきたいと思う。

印象に残ったのは、著者が子供時代に大麻を栽培した経験があると書いてあったことだ。著者は戦前生まれで、太平洋戦争中の小学校3年生のとき、学校から大麻種子を渡され、「庭に播いて成長記録をつけ、繊維を収穫して持ってくるように」と言われたそうだ。その繊維は軍用の衣料に使われたらしいが、当時の日本では小学生に大麻を栽培させて繊維を上納させていたのだということに、新鮮な驚きを覚えた。

  • 疑問点など
    • 223ページの図の解説に、5-MeO-DIPTを含むトリプタミン系薬物について「インドールアミンを構造中に持ち合成がむずかしく」と書いてあるが、次のページで5-MeO-DIPTを「合成が容易で入手しやすく」と書いてある。
    • 300ページでリトナビルの商品名がノービラ、カテトラとなっているが、正しくはノービア、カレトラのようだ。

出版社公式サイト

書評

デイヴィッド・J・リンデン 著 岩坂 彰 訳 『快感回路』 河出書房新社 (2012年)

パーキンソン病治療薬の「ドーパミン受容体アゴニスト」は、ギャンブル依存症を引き起こすという副作用があるという話など、面白い話が多い。

104ページに「バイオ企業のアムジェンは2000億ドルを投じてレプチンのライセンスを得た」と書いてあるが、これは約20兆円という金額になるため、桁を間違えているのではないかと疑問に思った。アムジェンは売上高が173億ドル、総資産が543億ドルに過ぎない。

佐藤 健太郎 (さとう けんたろう) 『創薬科学入門―薬はどのように作られる?』 オーム社 (2011年)

同著者の他の著書と比べるとかなり専門的である。製薬業界人や、これからその業界を志す人向けの入門書といった感じである。しかし、入門書なので一般人にもよく分かる内容となっており、それでいて「リピンスキーのルール・オブ・ファイブ」といった専門的な用語も出てくる。

向精神薬については「精神病治療薬」として一章が割り当てられており、抗うつ剤については詳しく書かれているが、その反面統合失調症治療薬の解説は少ない。

石丸 元章 (いしまる げんしょう) 『SPEED スピード』 文藝春秋 (2001年)

著者は、1990年代にさまざまな違法ドラッグを経験し、そのあと覚せい剤取締法違反で逮捕されたという略歴を持つ。近年は脱法ドラッグ(バスソルト?)にハマり、覚醒剤で逮捕された直後のASKAと同じ施設に一緒に入院していたという稀有な経験も持ち合わせている。

本書の文体は極めて軽い。ワルぶっているという点では『はみ出し銀行マンシリーズ』の横田濱夫に似ているが、彼の10倍は軽く、そしてワルい。高齢の浮浪者にいきなり飛び蹴りをしたりするなど、道徳的に酷い数々のことを行なっているが、真の極悪人ならば自分の悪事を本に書いたりはしないと思う。

著者は、当初はそこそこまともな思考で行動し、ギター男という相棒(GASBOYSというマイナーなヒップホップバンドのメンバー、後に追放。追記:2015年5月に死去)と、サイコビリーという人とともに行動するのだが、本の最後の方では石丸氏自身が覚醒剤精神病を発症し、見るからに異常な状態となっている。そして、ギター男は覚醒剤精神病が「臨界点を超えて発狂錯乱した」という。おそらく急性覚醒剤精神病から、薬をやっていないときも精神異常が継続する慢性覚醒剤精神病に移行したということだろう。そしてサイコビリーは妄想の結果、何かから逃げるために電車に飛び込んで自殺したという。3人が3人とも覚醒剤精神病になっているのである。

なお、著者は「注射をやっていないのに壊れてしまうなんて」と嘆いているが、実は注射よりも炙りの方がはるかに覚醒剤精神病を引き起こしやすいのだ(当サイトのコラム参照)。「炙りなら安全」という間違った知識が蔓延しており、著者もその犠牲者の一人なのだろう。しかし269ページの「2年間で脳ミソ肉離れしちゃった」という表現は秀逸だと思う。

本書の冒頭には「いったい誰に捧げればいいんだろう―」という献辞?が載っている。そしてこのサイトの書評では、この献辞に対して「もう本当に、誰のための本なんだこれは? とりあえずこれから違法薬物にトライしようと思っている読者諸兄に捧げたらいいんじゃないかな。」とのコメントを送っている。なるほど、確かにそうだ……と思ったのだが、石丸氏がASKAと一緒だった入所体験を語ったツイートで、「入院患者の約半数は、おれの本を読んでいるんだよ。きょうしゅくっていうか、やっぱ、せきにん、あるよね。」と語ってもいるのだ。この本が、薬物乱用者予備軍の人たちにとって薦められるかどうかの判断は保留したい。

総評としては、「これは悪書だ! だが多少面白い!」となる。

標準医療薬学 薬理学

薬学必修講座 薬理学 2015

もう一歩踏み込んだ薬物事件の弁護術

新・亡国のドラッグ

ドラッグの教科書

あぶないハーブ

【未読】 西嶋 康一 (にしじま こういち) 『悪性症候群とその周辺疾患』 新興医学出版社 (2010年)

【未読】 ニール・シーマン、フィリップ・シーマン、渡辺 雅幸 (わたなべ まさゆき) 著 渡辺 雅幸 訳 『抗精神病薬受容体の発見ものがたり』 星和書店 (2011年)

【未読】 ベンジャミン・ジェイムズ・サドック、バージニア・オルコット・サドック、ノーマン・サスマン 著 『カプラン精神科薬物ハンドブック 第4版』 メディカル・サイエンス・インターナショナル (2007年)

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