嗜好性薬物の世界

コラム

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精神的依存、身体的依存と並ぶ「社会的依存」とは?

薬物依存には、大きく分けて精神的依存と身体的依存の二つがあるとされている。精神的依存とは、薬物のことを思い出したり、注射器などの器具を見たりすると再び使いたくなるという渇望が生じたりすることや、また憂鬱な気持ちに陥ったときに、その辛さから逃れるために薬物を使用したくなるといった種類の依存のことである。一方、身体的依存とは、薬物摂取後に体内の薬物が減ってきて、薬効が切れ始めると体中に不快感や激痛が走ったりして、何とかして薬を再度摂取して、その苦痛を緩和したいと考えて再使用してしまうという種類の依存のことである。

しかし、私は以前から、薬物依存にはもう一種類の依存形態が存在するのではないかと考えてきた。それが第三の依存『社会的依存』である。社会的依存とは、労働や学業などの社会的な必要性や圧力によって、薬物の摂取を続けざるをえない状態に追い込まれてしまうといった原因による依存症のことである。お金や自由時間が十分にある環境の元ならば、さほど苦労せずに薬物から離脱できるタイプの人であっても、自身を取り巻く社会的環境の悪化によって社会的依存に陥ってしまうと、なかなか薬物の使用から抜け出せなくなる。もちろん、精神的依存の傾向が強い人の場合、離脱はさらに困難なものとなる。

社会的依存の例としては、下記のようなものがある。

  • 長距離トラックの運転手が、居眠り運転をせずに夜の高速道路で長時間走り続けるために覚醒剤を摂取する(実際にトラック運転手の覚醒剤使用率は高い)
  • 受験勉強に追い立てられて、覚醒剤を飲んでがり勉する(アメリカでは名門大学の受験生に対し、親がアンフェタミンを飲ませている)
  • IT企業とかの納期が迫ってどうしようもない過密労働で、眠る時間を削減するために覚醒剤を使用する(実際にタイではヤーバーという覚醒剤を従業員に配る企業がある)
  • 夜遊びの後、眠気をふるって学校に行くために覚醒剤を使用する

このように、社会からのさまざまな圧力によって薬物を使用せざるを得ない状況に置かれることを、私は第三の依存として「社会的依存」と呼ぶことを提唱したいと思う。日本におけるその起源は、第二次世界大戦中に軍需工場でヒロポンなどのメタンフェタミン製剤を労働者に飲ませていたことから始まる。終戦直後から覚せい剤取締法が施行されるまでの数年間は、ゼドリンなどのアンフェタミン錠剤や、ヒロポンなどのメタンフェタミン錠剤を飲んで受験勉強をすることが流行った。現代においても、コーヒーなどのカフェインが含まれる飲料を飲んで受験勉強や仕事をする人は数多い。ただし、カフェインは依存性や精神毒性が低いため、さほど問題とはなっていない。

社会的依存を引き起こすドラッグの種類は、おそらく一部に限られている。例えば幻覚剤のようなドラッグは、通常はビジネスや学業では使い道がないし、ストレス解消のために使うとしても、それほど大きな使用動機にはならないと思われる。ごく一部の芸術家は、幻覚剤を用いてインスピレーションを得て、その成果を仕事に反映したりするであろうが、社会的に見てそういった立場にある人々は極めて少数派である。一方、覚醒剤は最も社会的依存を引き起こしやすいドラッグであると考えられる。頭脳が明晰になり、眠気を振り払って仕事や受験勉強ができるため、競争社会においては使用する動機が強いものとなる。

社会的依存を解決するには、それこそ社会が変わらなければならない。当事者が学生なら、休学すれば問題はないし、受験生なら浪人を視野に入れるか、より難易度の低い学校に志望を切り替えるという程度で解決する。しかし、日々の生活費を稼ぐために働かざるをえない労働者(ワーキングプア層)は、景気が上向いてきてよりよい転職先が見つかるまで、社会の側が変わってくれることは期待できない。

フリーベース液体ドラッグの流行の可能性

現在、違法薬物市場で流れている覚醒剤は、塩酸メタンフェタミンや塩酸コカインなどの塩(えん)の形をとった固体のものか、クラックコカインのような固形のフリーベースのものに限られている。しかし、フリーベースのメタンフェタミンのような油性の液体のドラッグが流行する可能性はないだろうか?

現在のところ、筆者はフリーベースメタンフェタミンの沸点を確認できていない。英語のサイトを検索しているのだが、どうも塩酸メタンフェタミンの沸点(215℃)を、フリーベースの沸点として記載してしまっているサイトが多いように思われる。しかし、おそらくフリーベースは揮発性が高い液体であろうと思われる(注:書いた後、ケミカル総合BBSにてフリーベースと塩酸塩の沸点は同じであるというご教示をいただいた。ただコカインがフリーベースと塩酸塩で沸点が異なるのに、メタンフェタミンは同じである理由が分からないため、調査中である)。

塩酸メタンフェタミンは、加熱吸煙(炙り)をする際、アルミホイルまたはガラスパイプなどの容器と、ライターなどの熱源が必要であった。しかし、フリーベースであれば、トルエンと同様に揮発性があるはずだから、熱源がなくても気化吸引が可能なはずである。一例としては、「チルチルミチル ミクロフィルター」のようなタバコ用フィルターに、ミシン油のような容器に入っているフリーベースのドラッグを滴下し、それを加熱せずにただ吸うだけで、蒸気の吸引が可能となる。

職場や学校などで、他人の目を忍んで覚醒剤を吸引している人はそこそこいると思われるが、ガラスパイプとライターが必要なのでは、トイレの個室内でこっそり吸引するなどの方法でなければ、目立ってしまうと思われる。しかし、熱源不要なフリーベースであれば、机の前に座りながらでも吸引が可能であり、手軽に摂取できる。

こういった理由から、ひょっとすると将来的にこのような形態のドラッグが流行するのではないかと予測しているのだが、皆さんはどう思われるだろうか?

その後わかったこと

上記の文章を書いた後、様々な実験や考察、情報収集を経て、少なくともフェネチルアミン系ドラッグは、フリーベースで供給されても、加熱をせずに吸引するのは非現実的であることが分かった。たとえば、フリーベースのフェネチルアミンをタバコ用フィルターにたらして吸ってみても、シンナーや亜硝酸エステルのような低沸点のドラッグとは違って揮発性が低いため、ほとんど効果はなかった。フェネチルアミンは、もっとも単純な構造を持つ部類の交感神経作動性アミンであるが、メタンフェタミンはもっと分子量が高いため、さらに気化しにくいと思われる。

一方、こういったフリーベースのドラッグをガラスパイプやヴェポライザー(高級な電子タバコ)に入れて加熱吸煙する場合はどうだろうか? 筆者はフリーベースのフェネチルアミンをガラスパイプで加熱して吸煙してみたが、煙を吸ったとたんに喉に強い刺激があり、咳き込んでしまった。無理してさらに吸うわけにもいかず、また一度の吸煙ではほとんど薬効(ラッシュ)は感じられなかった。フリーベースのアミンはアルカリ性物質であるため、その蒸気を吸うことは喉をアルカリで爛れさせることを意味する。通常、フェネチルアミン系ドラッグの加熱吸煙にはフリーベース(通常は液体)ではなく塩酸塩(通常は固体)が使われるが、それにはこういった理由があったのだと気付いた。塩酸塩であれば、気化した時にアルカリ性のアミンと酸性の塩化水素が混ざっているため、喉への刺激は強くない。ただし、力価の高いドラッグであれば、フリーベースのまま吸煙しても、喉荒れにつながるレベルの強アルカリ性の煙を吸わなくても十分に薬効を享受できる可能性がある。例えばMDPV(微量でも強力なドーパミン再取り込み阻害作用がある)はフリーベース化して吸煙される例もあるという(ただし、MDPVは塩酸塩のままだと沸点が高いため熱分解しやすいという事情もあるようだ)。

その一方で、コカインの場合は、吸煙の際には塩酸塩ではなくフリーベースにしたもの(通称クラック)が専ら使用される。これはおそらく、塩酸コカインを炙ると熱分解して焦げてしまうためだと思われる。そして、クラックコカインもアミンの一種であるため、その蒸気もアルカリ性のはずだが、あまり喉を傷めるという話は聞かない。理由は分からないが、化学構造的にアルカリ性が弱いということなのだろうか。

一方、シンナー類(トルエンなど)、亜硝酸エステルなどの揮発性の高いドラッグの場合、タバコフィルターを用いて常温で吸引することは可能だと思われる。筆者は亜硝酸ペンチルという試薬をタバコフィルターに垂らして吸引してみたことがあるが、確かに心臓の鼓動が強くなったりする作用が感じられ、十分に有用な摂取方法であることが確認できた。亜硝酸ペンチルは、これまでに流行った亜硝酸系ドラッグ(通称ラッシュ)の中では沸点が高い方に位置するので、この方法で吸引してもさほど強力な効果は得られなかったが、今後低沸点の亜硝酸系合法ドラッグ(未規制の物としては、亜硝酸セカンダリーブチル、亜硝酸シクロプロピルなどがある)が登場した場合、こういった摂取方法が流行するのではないかと考えている(正直に言うと、このコラムがきっかけになればうれしく思う)。なお、シンナー類の場合、物質によってはプラスチック製のタバコフィルターを溶かしてしまうのではないかという懸念もあるので、実用可能かどうかは未知数である。

覚醒剤精神病と統合失調症

この項目は書きかけです。

皆さんは、統合失調症という病名を聞いたことがあるでしょうか? この病名に馴染みがなくても、精神分裂病という病名なら聞いたことがあるという方も多いと思います。統合失調症は、近年まで精神分裂病という名前で呼ばれていました。この病気は、人口の約1%の人が掛かってしまう病気であり、遺伝的な素因(掛かりやすい体質)がある人を除いて、どんな社会階級の人にもほぼ同様に起こりうる病気なのです。しかし、その発症リスクを大幅に上げてしまう行為が存在するということは、多くの方がよく知らないと思います。

覚醒剤を濫用している人の場合、統合失調症が発症するリスクが何倍にもなります。つまり、覚醒剤を使用せずに一生を終えた場合、統合失調症にはならなかったはずの人でも、覚醒剤を使用することにより、統合失調症になってしまう場合があるのです。

覚醒剤によって引き起こされる統合失調症を、「覚醒剤精神病」といいます。覚醒剤精神病と、本来の自然発生型の統合失調症との違いについては、様々な解釈があり、その境界線ははっきりとしてはいません。まず、統合失調症についてざっと解説しますと、この病気には、「陽性症状」と呼ばれる、幻聴や被害妄想などの、他人にとって気づかれやすく、また自他に迷惑をかけてしまいやすい症状と、「陰性症状」と呼ばれる、ややうつ病に似た、本人の能力を下げる性質の症状が存在します。そして、自然発生型の統合失調症の場合、必ず陰性症状が存在しますが、陽性症状は、ある場合とない場合があります。つまり、統合失調症の本質は、陰性症状にあると考えられるのです。ただし、陰性症状だけだと診断しづらいので、多くの場合、「シュナイダーの一級症状」と呼ばれる陽性症状を元に診断がなされることになるようです。一方、覚醒剤精神病の場合は、陽性症状しかありません。

このように書くと、覚醒剤精神病と、統合失調症は全く違う病気だと思われる方が多いと思いますが、実は、覚醒剤精神病と自然発症型の統合失調症は、熟練した精神科医が診察に当たっても、区別がつかないほど症状がよく似ているのです。ある患者について、以前に薬物乱用歴があるという情報がない場合の多くは、何の疑いもなく統合失調症との診断を下してしまうようです。これはやはり、陽性症状はよく目立つが、陰性症状は目立たないからでしょう。

なお、覚醒剤精神病には、その時の状況によっていくつかの区分があります。まず、覚醒剤を摂取した直後の、体内の薬物濃度が高い時期に起きる精神症状は、「急性覚醒剤精神病」と呼ばれます。通常、薬物が体内で分解されて、薬が切れてくると、症状は治まります。通常、統合失調症の患者には、「自分は精神病である」という病識がない場合が多いですが、急性覚醒剤精神病の場合、急性期を過ぎると病識が出てくる場合が多いようです。なぜなら、自然発生型の統合失調症の場合、病状の波はあるものの、ほぼ常時、思考力や判断力が病的な状態であるために、自分がおかしいという認識が不可能だからです。一方、急性覚醒剤精神病の場合は、体内の薬物濃度が高い急性期は、全く病識はなく、幻覚を見ても幻覚だと気づかなかったり、被害妄想に襲われて、本気で逃げ回ったりするのですが、薬効が切れてくると、正気を取り戻して、数時間前に自分が薬の作用によって病的な考えを抱いていたと気づくためです。

一般には、炙り(加熱吸煙)の方が注射よりも乱用性が軽いと思われがちであり、イメージ的にも気軽に手を出しやすくなっています。しかし、実は覚醒剤精神病のリスクにおいては、静脈注射よりも炙りの方がはるかに高リスクなのです。ある統計によると、精神病的な体験が現れるまでの期間は、静脈注射での乱用者の場合は4.8年ですが、炙りによる乱用者の場合はたったの1.5年です。これは、静脈注射よりも炙りの方が大量の覚醒剤を摂取することになるためだとされています。静脈注射の場合、かなり耐性が付いた人でも、せいぜい1日に1gまでしか使用しないのに対し、炙りの場合、15gも使用する場合があります。注射と違って、追加摂取するときの手間が少ないため、次々に追加摂取してしまうのでしょう。 

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